2015年06月07日

会社が労災を認めない、会社が労災の申請をしてくれない時の対処方法

「自分が気をつけなかったから悪いんでしょ、こんなの労災と認めないよと言って、会社が労災と認めてくれないです」
「こんなの労災でも何でもないし、労災にした前例もない、労災じゃないんだから労災の申請手続きもしないよって会社に言われたんですけど・・・」

「労災保険に加入していないから、労働災害が起きても労災は申請できないよって会社に言われたんですけど本当でしょうか?」
「労災保険の保険料を支払っていないのだから、どうせ労災にはならないし労災の保険給付ももらえないよって社長も上司も言うんですけど本当でしょうか?」

「小さい会社だから労災保険に入る必要はないって会社に言われたんですけど」
「赤字の会社は労災保険に入る必要はないって言われたんですけど」

「従業員を一人しか雇っていないから、労災保険に加入する義務はないって言われたんですけど」
「短期間雇用のアルバイトやパートしかいないから、労災保険に加入する必要はないって上司が言うんですけど」
「日本国籍のない外国人だから、労災保険に加入する必要はないって社長が言うんですけど」

このような悩みを抱えて悩んでいらっしゃる方がますます増えています。
会社側が法律を知らなくて言い訳している場合もありますが、違法だとよくわかっているのに、従業員に対してはウソやデタラメをわざと言っている場合もあります。

会社側が全て正しいとは思わないでください。
会社側の言うことを決して鵜呑みにはしないでください。


本当は労災に該当していて保険給付がもらえるはずなのにもかかわらず、諦めて泣き寝入りしたり、我慢せざるを得なかったり、無理やり辞めさせられたり、辞めたいのに辞めさせてもらえなかったりといった状況に陥り、苦しんでいる方がたくさんいらっしゃるという現状に胸が痛みます。

そのため今回は、会社側がよく言うウソやデタラメな言い訳なども交えて・・・

労働者災害補償保険(略して「「労災保険」)や労働災害(略して「労災」)の基本中の基本と、会社が労災を認めてくれない、会社が労災の申請をしてくれない時の対処方法について明記します。


【労災保険の基本中の基本】
まず、労働者災害補償保険(略して「「労災保険」)についてです。

「小さい会社だから、労災保険に入る必要はない」
「中小零細で規模の小さな会社は、労災保険に入る義務はない」
「赤字の会社は、労災保険に入る必要はない」
「労災保険に加入しなければいけない業種・業態じゃないから、労災保険に加入する必要はない」

などと言う会社もありますが、

従業員を一人でも雇っていれば、原則として労災保険が強制適用されます。
いくら社長や上司が嫌だと言っても、労災保険は強制加入ですので、労災保険に加入しないという選択権を会社側は持っていません。


労災保険の場合、適用が除外されるのは政府の直営事業と官公署の事業だけです。
つまり、民間企業では強制適用事業(強制加入)と暫定任意適用事業しかありません。
暫定任意適用事業であったとしても、労働者の過半数が希望したら、労災保険の任意加入を行わなければならない義務があります。

「株式会社」や「有限会社」などの法人は、強制加入です。
資本金額や従業員数、業種・業態、売上高や利益の額などに関係なく、強制加入です。

労災保険は強制加入なのですから、労災保険に加入していない時点で違法です。
労災保険の強制適用の会社なのにもかかわらず、労災保険に加入していないということは、「うちの会社は法律違反をやらかしています」と会社側が自ら暴露しているようなものです。

「従業員を一人しか雇っていないから、労災保険に加入する義務はない」
「正社員を雇っていないから、労災保険に加入する必要はない」
「短期間雇用のアルバイトやパートしかいないから、労災保険に加入する必要はない」

「派遣社員だから、労災保険に加入する必要はな」
「外国人を雇っているから、労災保険に加入する必要はない」

「雇用契約書に労災保険に加入しないと明記してあるので、キミは労災保険に入っていない」
「労災保険に加入していなくても文句は一切言いませんという同意書にサインしたのだから、文句を言われる筋合いはない」

などと言う会社もありますが、

正社員でなくてもアルバイトやパート、契約社員や派遣社員などであっても、短期間雇用や臨時雇用であっても、たとえ就労資格がない不法就労の外国人であったとしても、従業員を一人でも雇用しているのであれば、会社は労災保険に加入する義務があり、保険料を支払う義務があります。

派遣社員の場合は、派遣先の会社ではなく派遣元である派遣会社に労災保険に加入する義務があり、保険料を支払う義務があります。
(つまり、派遣先で労働災害が発生しても、派遣元である派遣会社の所在地にある労働基準監督署の管轄です)

法律の方が雇用契約や就業規則よりも効力が強いので、雇用契約に何と書いてあろうと、同意書を交わしていようと、会社は労災保険に加入する必要があります。


保険料を支払わないという選択権も会社側にはありません。
赤字であっても保険料を支払うお金がないと言っても、労災保険は強制加入ですので、強制的に保険料を徴収されます。

国税や地方税などの税金に次ぐ優先順位なので、保険料を強制的に徴収されます。
保険料の支払を滞納したら延滞金も徴収されますし、財産も差し押えられます。

なお、保険料を支払う義務を負っているのは会社側だけで、会社側に全額負担する義務があります。
雇用保険料とは違って、従業員には労災の保険料を支払う義務がありません。

ですので、もしも給料から労災の保険料を天引きされていたら違法ということです。


【勤務先が労災保険に加入しているかどうかを確認する方法】
インターネットに接続できるパソコンさえ持っていれば、誰でも無料で、全国どこの企業であっても調べることが可能です。
もちろん、入社前であっても、入社後であっても、ご自身とは無関係の企業であっても確認できます。

詳細については、以下をご参照ください。

企業の雇用保険・労災保険加入状況を調べる方法


【労働災害(労災)の基本1】
労働災害(略して労災)とは、従業員が仕事中または通勤途中にケガをしたり病気になったり障害を負ったり死亡したりする災害のことで、「労働者災害補償保険法」という法律で規定されています。
(保険料の関しては、「労働保険の保険料の徴収等に関する法律(略して労働保険徴収法)」に規定されています)

労災は大きく2つに分けられます。
「業務災害」と「通勤災害」です。


【労働災害(労災)の基本2:業務災害の判断基準】
業務災害に該当するかどうかの判断基準は、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つによって行われます。

「業務遂行性」というのは、会社の命令によって業務を遂行しているということです。
社内で業務を行っている時はもちろんのこと、休憩中や待機中も「業務遂行性」があるとみなされます。
社外にいても、出張中や研修中なども「業務遂行性」があるとみなされます。

「業務起因性」というのは、その業務を行ったが故に災害が発生した場合を指します。
例えば、工場で勤務していて機械に巻き込まれてケガをした状況を考えるとイメージしやすいのではないでしょうか。
機械を扱う業務を行っていなければ、ケガをすることはなかったということですから。

なお、業務災害による病気(疾病)に関する具体的な労災認定基準については、以下に明記しておりますのでよろしければご覧下さい。

労災認定基準:労働基準監督署はどんな基準で労災を判断するのか

また、業務災害による病気(疾病)の中でも、特にパワハラ、セクハラ、長時間労働などによってうつ病等になった場合の労災認定基準の詳細については、以下に明記しておりますのでよろしければご覧下さい。

うつ病等の労災認定基準:パワハラ、セクハラ、長時間労働など


【労働災害(労災)の基本3:通勤災害の判断基準】
通勤災害に該当するかどうかの判断基準は、それが「通勤」に該当するのかどうかです。

自宅と勤務先の会社は通勤に該当します。
途中で日用品の買い物を行ったり親の介護のために実家に寄ったりした場合は、その間は通勤とはみなされないため事故等に遭ったとしても通勤災害にはなりません。
いつもの通勤経路に戻ったら通勤に該当するので、通勤災害になります。

通勤というのは、自宅と勤務先の会社の間だけではありません。
例えば、単身赴任をしていて、赴任先の自宅と帰省先の自宅を往復する場合も通勤に該当します。
掛け持ちの仕事をしていて、A社からB社に移動しているといった場合も通勤に該当します。


【労災隠しが疑われるケース】
「労災保険に加入していないから、労働災害が起きても労災は申請できないよ」
「労災保険の保険料を支払っていないのだから、どうせ労災にはならないし労災の保険給付ももらえないよ」

などと言う会社もありますが、これらは全てデタラメです。

先述の通り、そもそも労災保険は強制加入なのですから、経営者が労災保険の加入手続きを行っていなくても、労災保険料を支払っていなくても、滞納していたとしても、そんなことは経営者の勝手な都合や言い訳なのであって、従業員には一切関係ありません。
つまり、会社側がどう言おうと、労災保険の加入手続きを行っていなくても保険料を支払っていなくても、労災保険の適用事業所に勤めている労働者(労働基準法第9条の労働者)であれば、労災の申請手続きを行うことができ、保険給付を受けられるということです。

また、

「こんなの労災でも何でもないよ、労災じゃないんだから手続きも必要ないよ」
「自分が気をつけなかったから悪いんでしょ、こんなの労災と認めないよ」

などと言う会社もありますが、これらもウソです。

会社側に労災の判断を行う権限はありません。
労災なのか労災でないのかを判断するのは、社長でも上司でもありません。

労災認定を行うのは、労働基準監督署です。


労働災害が発生した場合は、所轄の労働基準監督署に報告書を提出しなければならないと定められています。
会社側が労働災害の報告を行わなかったり、ウソの報告をしたりするというのは、労災隠し(労働安全衛生法の違反)であり、立派な犯罪行為です。
社長だけではなく、上司も罰せられます。


【労災保険の申請手続き】
本来であれば会社が申請手続きを行いますが、会社は手続きを代行しているに過ぎません。

会社が手続きを行ってくれない場合は、ご自身で手続きを行うことができます。
そもそも、保険給付を請求する権利も保険給付を受ける権利も、本人または本人が死亡した場合は遺族にあります。

労災指定病院に行った場合は、病院から労働基準監督署に治療費の請求が行われますので、労災であることを伝えて病院の窓口に「療養補償給付たる療養の給付請求書」を提出します。
健康保険による診療とは違って、診療というかたちの現物給付で保険給付を受けるので、業務災害の場合なら自己負担は一切必要ありません。
(通勤災害の場合は、200円を1回だけ自己負担する必要あります)

労災指定病院以外に行った場合は、一旦立て替えて後日請求するという流れのため、全額自己負担する必要があります。
そして、「療養補償給付たる療養の費用請求書」や領収書を勤務先を所轄する労働基準監督署に提出し、病院に支払った費用を後から払い戻してもらうという流れです。

請求手続きの詳しい流れは、「療養(補償)給付の請求手続(厚生労働省)」のページをご参照下さい。
提出用の書類は、「労災保険給付関係請求書等ダウンロード(厚生労働省)」のページでダウンロードできます。

なお、提出する書類には「事業主証明欄」がありますが、会社が証明してくれない場合は証明なしでも労働基準監督署に提出できます。
労働基準監督署に提出すれば、労働基準監督署が職権で調査してくれます。


【労災保険の給付内容】
「労災」と言うと、治療費が無料になるだけというイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、決してそれだけではありません。
非常に手厚い給付内容になっています。

たとえば、治療中で働けず給料がもらえないのであれば、一日あたりの給料の60%を働けなくなって4日目から補償してもらえます。
(業務災害の場合は休業補償給付、通勤災害の場合は休業給付)

治療を始めて1年半経っても治らないのであれば、給料の245日分以上を補償してもらえます。
(業務災害の場合は傷病補償年金、通勤災害の場合は傷病年金)

治っても障害が残った場合は、障害等級に応じて補償してもらえますし、介護のために必要になった費用ももらえます。
万が一、死亡した場合には、遺族補償もありますし、葬式代ももらえます。


【注意事項】
マジメな人ほど注意が必要なので、念のため明記しておきます。

「まだ療養を続けるのなら、退職願を書け!」
「人手不足で忙しいのにいつまで休んでいるんだ!そんなヤツはクビだ!」
「何があっても休みませんと同意書にサインしたのに、ちょっとケガしたぐらいで休むヤツはクビだ!」

などと、まだ治っていないにもかかわらず会社側から言われたとしても、従う必要はありません。

業務災害上のケガや病気で休んでいることを理由に、解雇するなどもってのほかです。
会社に申し訳ないなどと感じて退職願を書いてしまったら、それこそ会社の思うツボです。

無期契約を交わしていて業務災害なのであれば、治療期間中とその後30日間は解雇できない(解雇制限期間)と労働基準法で決まっています。
法律の方が雇用契約や就業規則よりも効力が強いので、雇用契約に何と書いてあろうと、同意書を交わしていようと、そんなことは関係ありません。

まだ治っていないのに無理して出勤してしまうと、解雇制限期間ではもうないからと解雇されてしまう恐れがあります。
その上、保険給付が打ち切られてしまうので、無理して出勤してもいいことは一つもありませんので、くれぐれもご注意下さいね。


【参考】
よろしければ、以下も参考になさって下さいねー。


どんな解雇なら不当で、どんな解雇なら不当ではないの?
なぜ会社は辞表(退職願・退職届)を書かせようとするのか?
「クビだ!」等と言われた時、やるべきこととやってはいけないこと
社長や上司の一言で即日解雇って、あり?なし?

会社が労災を認めない、会社が労災の申請をしてくれない時の対処方法
労災認定基準:労働基準監督署はどんな基準で労災を判断するのか
うつ病等の労災認定基準:パワハラ、セクハラ、長時間労働など
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posted by 西区地域労組 at 20:10| 知ってトクする!こんな話あんな話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする