2017年03月12日

36協定(サブロク協定)について最低限知っておきたいこと

残業上限:月100時間未満で決定、年960時間残業の抜け穴発覚
残業上限案:特例で年720時間(月平均60時間)まで認める方針

などの記事をご紹介しております。

しかしながら、残業時間の上限を何時間にしようとしているのかという話なんだろうなとは何となくわかったとしても、残業時間の上限は実際のところ何時間までならいいものなのか、何がどう問題なのか、そもそもどうして青天井の残業が可能になってしまっているのかよくわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?

また、36協定(サブロク協定)という言葉を聞いたことがあったとしても、36協定(サブロク協定)がどういうのものなのか、36協定(サブロク協定)というものが何故存在するのかなどについて知らないと、ニュースを見て自分なりに考えたくてもどう考えて良いのかわからなくなってしまうこともあるのではないでしょうか?

そこで今回は、36協定(サブロク協定)を中心に、労働者として働く上で最低限知っておきたいことを順を追ってご紹介いたします。

まずは・・・

絶対に覚えておきたい基本中の基本からです。


【基本中の基本:労働基準法上では残業禁止が大原則】
労働基準法上、実は残業は原則として禁止されています。

「え!?残業禁止が原則なの??そんなバカな!!」と驚いた方も多いと思われますので、まずは該当する条文をご紹介します。


<労働基準法 第32条>
使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない
使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない


上記の通り、法律で定められている労働時間は、1週間40時間以内で、且つ、1日8時間以内が大原則です。
これを「法定労働時間」と言います。

「1週間40時間、且つ、1日8時間を超えて労働させてはならない」という点がポイントです。
法律の文章というのはとかくわかりにくいので念のため明記すると、「〜ならない」という表現は禁止を意味します。

つまり、法定労働時間である「1週間40時間、且つ、1日8時間」を超えて労働させたら労働基準法違反となるということです。
使用者には罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科せられる上、残業代(割増賃金)を支払う義務も生じます。

残業代(割増賃金)を支払いたくなければ従業員に残業させるな、法定労働時間をちゃんと守りなさいというのが大原則です。
ペナルティとして残業代(割増賃金)の支払義務等を使用者に対して課すことによって、労働者に長時間労働をさせないようにしているというわけです。

これが基本中の基本の大原則です。
この条文だけで言うのであれば、例えば「1日の労働時間は12時間」と就業規則や雇用契約書に明記されているだけでも労働基準法違反となります。

法律で定められている労働時間「法定労働時間」に対して、会社が定めている労働時間を「所定労働時間」と言います。
「法律なんか関係ない、うちの会社では1日12時間労働が普通だから」などと平気で言う会社もありますが、決して鵜呑みにはしないで下さい。

それは労働基準法を知らないか、知っていてわざとウソをついているだけです。
「1週間40時間、且つ、1日8時間を超えて労働させてはならない」のが大原則なのですから。

雇用契約や就業規則と労働基準法(労基法)ではどちらが優先されるか?

にも明記した通り、労働基準法(労基法)というのは優先順位が最も高く最も強く強制的に適用される「強行法規(強行規定)」であり、あくまでも「最低基準を定めたもの」ですから、労働基準法(労基法)の基準に達していない雇用契約も就業規則も社長や上司の命令も無効です。

就業規則や雇用契約書に「1日の所定労働時間は12時間」などと明記されてあったとしても、この「12時間」の部分が無効になり、労働基準法(労基法)で定められている1日の法定労働時間は8時間ですから、「1日の所定労働時間は8時間」に強制的に上書きされるということです。


【抜け穴1:原則禁止の残業を例外的に認める「36協定」】
上記の「1週間40時間、且つ、1日8時間を超えて労働させてはならない」 = 残業禁止というのがあくまでも大原則です。

しかしながら、原則禁止の残業を、労働者に例外的に命じられるようにする方法があります。
しつこいようですが、上記の労働基準法第32条によって原則として残業は禁止されているため、「あくまでも例外的に」ということです。
(「抜け穴」とも言いますが・・・)

ここで登場するのが、「36協定(サブロク協定)」というものです。
労働基準法第36条に基づく労使協定のため、「36協定」と呼ばれています。

「36協定」を締結せずに、法定労働時間を超えて労働者を働かせることはできません。
「36協定」を締結していないのに、法定労働時間である1週間40時間、且つ、1日8時間を超えて労働させられている(残業させられている)のなら労働基準法第32条違反となります。

というわけで、まずは労働基準法第36条を確認しておきましょう。


<労働基準法 第36条>
使用者は、労使協定をし、これを行政官庁(所属労働基準監督署長)に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は法35条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

厚生労働大臣は、労働時間の延長を適正なものとするため、労使協定(36協定)で定める労働時間の延長の限度、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して基準(限度基準)を定めることができる。

労使協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定で労働時間の延長を定めるに当たり、当該協定の内容が限度基準に適合したものとなるようにしなければならない。


法律の文章は難しく書かれていてどうもよくわからないという方も多いと思いますので、ものすごく簡単に言うと以下のようになります。


○ 労働者・使用者間で何時間までなら労働時間を延長してもいいのか等を話し合う

○ 労働者・使用者間で合意したら、書面で労使協定(36協定)を結ぶ

○ 労使協定(36協定)を労働基準監督署に届け出る

○ 就業規則に明記

○ 労働者に周知


要は、原則禁止の残業を合法的にさせるには、正しい手続きをきちんと踏まなければならないということです。

「労使協定(36協定)の締結 + 届出 + 就業規則に明記 + 労働者に周知」はセットです。
「労使協定(36協定)の締結 + 届出 + 就業規則に明記 + 労働者に周知」のどれ一つ欠けても、「労使協定(36協定)で定めた事項は有効にならない」ということです。

労使協定(36協定)そのものには、権利・義務を設定する効力はありません。
就業規則に明記して労働者に周知することによって初めて、使用者は労働者に残業を命じられる権利が発生し、労働者は残業命令に従う義務が発生します。

しつこいようですが、労働基準法第32条によって残業は原則として禁止されているのですから。
原則禁止の残業を、労使協定(36協定)によって「あくまでも例外的に」行えるようにしているわけですから。

逆に言うと、労働基準法第36条を無視して、「上司が残業しろと言っているのだから残業しろ」「残業ありと雇用契約書に書いてあるだろ、労基法なんか関係ない」「うちでは残業するのが普通なんだから残業できないヤツはクビだ」などというのは一切通用しないということです。
先述した通り、労働基準法は優先順位が最も高く最も強く強制的に適用される「強行法規(強行規定)」ですから。

労使協定(36協定)で決めなければならない事項にはいくつかあります。
その内の一つが、法定労働時間を超すことができる時間外労働時間(残業時間)の上限です。

と言っても、何時間でもいいといった青天井に決められるわけではありません。
厚生労働省によって、以下のように上限が定められています
(以下はあくまでも最大限という意味なので、労使協定(36協定)で例えば1ヶ月30時間と決めることもできます)

○ 1週間: 15時間
○ 2週間: 27時間
○ 4週間: 43時間
○ 1ヶ月: 45時間
○ 2ヶ月: 81時間
○ 3ヶ月:120時間
○ 1年 :360時間

この上限を超えて労働者に残業させた場合、原則として労働基準法第36条違反なります。
(但し、後述の通り恐ろしい特例がありますが・・・)

また、「労使協定(36協定)を締結しているんだから残業代を支払う必要はない」などと、無茶苦茶なことを言う会社もあるので要注意です。
労使協定(36協定)は原則禁止の残業を「あくまでも例外的に」行えるするためのものなのであって、使用者による割増賃金(残業代)の支払い義務を免除するためのものではないので、くれぐれも騙されないようにして下さいね。

労使協定(36協定)で決めておかなければいけない事項には、法定労働時間を超すことができる時間外労働時間(残業時間)の上限以外にも色々とあります。
しつこいようでずか、何せ原則禁止の残業なのですから、細かく詳しく決める必要があります。

労働局に「時間外・休日労働に関する協定届(36協定)」という様式が用意されており、ダウンロードも可能ですので、とりあえず東京労働局と大阪労働局のみですがリンクをはっておきます。

東京労働局
大阪労働局


【抜け穴2:「特別条項付き36協定」で例外のさらなる特例で青天井の残業に】
上記を読まれて、「じゃあ、どうして青天井の残業をさせられてしまうんだろう?」「うちの会社では厚生労働省が定めた上限をはるかに超えた残業が普通になっているんだけど?」と不思議に感じた方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?

それは、労使協定(36協定)には「特別条項」という恐ろしいものがあるからです。

本来であれば厚生労働省が定めた上限までしか時間外労働時間(残業時間)を命じられないはずです。
しかしながら、「特別条項付き36協定」によって、「一時的・臨時的」に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない「特別な事情」が予想される場合には、厚生労働省が定めた限度時間を超える労働時間を延長時間とすることができる = 事実上、青天井に残業を命じることができるようにしているのです。

言うなれば、例外のさらなる特例です。

「抜け穴のさらなる抜け穴」とも言えますが、「抜け穴」どころではないとんでもないザル状態になっているのは、この「特別条項」が原因です。

しつこいようですが、上記の労働基準法第32条によって原則として残業は禁止されています。
にもかかわらず、労働基準法第36条で例外を設け、厚生労働省が上限となる時間を定めています。

その上さらに、「一時的・臨時的」で「特別な事情」という特例まで設けて、厚生労働省が定めた上限時間超えを許容し、結果として青天井の残業が常態化してしまっているのが今の日本の現状です。


いうなれば、

ダブルスタンダード(二重基準)どころか、
トリプルスタンダード(三重基準)という状態


に、現行の労働基準法でも既に陥っているのです。

残業上限:月100時間未満で決定、年960時間残業の抜け穴発覚
残業上限案:特例で年720時間(月平均60時間)まで認める方針

で、現在審議されていたのは、厚生労働省が定めた上限のことではなく、実はこの「特別条項」上での上限のことです。
つまり、「一時的・臨時的」で「特別な事情」という特例である「特別条項」を維持したまま、「特別条項」での残業時間の上限について審議しているというわけです。

上記の労働基準法第32条、労働基準法第36条、そして「特別条項」について理解した上で読むと、さらに恐ろしい話のように感じませんか?

これで本当に残業時間の上限を規制・強化していると言えるのでしょうか?
残業時間を事実上青天井にできる「抜け穴」や「法の抜け道」を、本当にふさぐつもりはあるのでしょうか?
むしろ、持ち帰り残業やサービス残業等が増えてしまうのではないでしょうか?

これで本当に過労死や過労自殺がなくなるのでしょうか?
過労死や過労自殺をなくす気持ちが本当にあるのでしょうか?

などと考えさせられてしまいませんか?


【参考】
よろしければ、以下も参考になさって下さいねー。


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posted by 西区地域労組 at 15:05| 知ってトクする!こんな話あんな話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする